ワンピース魂

オリジナルコーナー

第10節 新たな契約(中編)

ドンドンドンッ!!
「すみません、どなたかいらっしゃいませんか!!」
女性「はい・・・どちら様でしょうか」
扉が開き、1人の女性が出てきた。その両腕には赤い印。
「あの・・・私っ、と申します」
女性「ああ、あなた・・・何でしょうか」
「魔女の居場所、ご存じないですか?!」
女性「・・?ああ、バングルを外す方法をお探しなんですか?」
「え?」
女性「シリル様と結婚するのに障害になるから外したいんじゃないんですか?」
「(お妃様の件、すっかり忘れてた・・・)あ、いえ、違うんです。今重症の方がいて、すぐにでも魔女と会いたいんです!」
女性「・・・そう。姉が見つけてきてくれたのだけど、確かソンブル通りって言ってた。でも、そこにとどまっているかはわからないわ。もぅ5年も前の事だし。それに・・・」
フ「それに?何だ?」
女性「契約をして生き永らえるのが本当にその人のためかしら」
「・・・」
女性「あなたも契約しているならわかるでしょう。心優しい人なんてこの世にいないんじゃないかと思うくらい、私と契約した人は豹変したわ。私は・・・毎日生きている事がツラい。人なんて、もう信じられない」
ロ「・・・・・」
何かを思い出しているようなロビン。
フ「・・どんなヤツなんだ?風貌とか年齢とか、何でもいい。頼む、教えてくれ」
女性「・・見た目は普通のおばあさんです。独特な衣装とかも着ていないですし・・・」
男性「おい!!誰か来てるのか?!」
ビクッッ!!!女性が大きく震える。
女性「いえ、道を聞きにいらした方が・・・もう大丈夫です」
ドアを閉めかける女性。
「あ、あの・・ありがとうございました!」
女性「・・・・・」
バタン。
フ「本当にその人のためなのか・・・か」
「考えていてもしかたありません。行きましょう!きっと・・きっと大丈夫!私、既に契約してますしね。承諾者にになっても無茶なお願いとかおばさまにしないと思うんですよ!」
無理やり笑う
ロ「行きましょう」
「はい、こっちです!!」

―ソンブル通り到着―
ロ「ここがソンブル通り」
いかにも暗い、ゴロツキがいそうな場所だ。
今まで見てきたヴェールの美しさからは想像もできない通りである。
うずくまっていたり、立ち話をしていたり・・いずれにしろこの通りにいる人々は男性ばかりだ。
「あの・・すみません、この辺りでおばあさんを見かけた事はありませんか?」
男性1「ああ?何だ、嬢ちゃん。ばばあ?この辺りにそんなのいたらいいカモになっちまうよ」
男性2「へぇ、嬢ちゃん契約者か。おれの言う事も聞いてくれねぇかなぁ・・・ヒヒヒ」
男性1「お、もう1人の女もめっちゃいいじゃねぇか。オレたちと・・・」
フ「急いでいるんだが、ババアの事は知らないって事だな?」
急に影から現れたフランキーにビビる男性陣。
男性1「何だ、男連れかよ」
男性2「だから知らねェって・・・」
男性3「おれ、見たことあるぞ」
それまで黙っていた男性が話しだした。
「本当ですか?!!どこででしょう。居場所をご存知ですか?」
男性3「知ってるっちゃぁ知ってるけど・・・あんなババアにお前ら何の用だよ」
「それは、実は私の・・・」
ロ「その方に会いたいという方がいるの。急を要するのよ」
男性3「・・・ついてきな」
男性とともに通りを更に奥に行く。
男性3「そいつにあったって契約してくれるとは限らねェぜ」
「・・・!なぜ、そのことを・・・」
男性3「こんな時間に必死にババア1人探すなんて他に理由ねェだろ。てかあんたらは運がいい。あいつは1年毎に居場所を変える。今は次の場所が見つからずここにたまたまた少しの間戻ってきただけだ」
ロ「幻の人なのに、あなたはずいぶん詳しいのね」
男性3「・・・・・ここだ」
ボロボロで家なのかも疑わしい木の塊の、かろうじてドアらしき部分を勝手に男性は開ける。
男性3「おい、客だ」
ロウソクの薄暗い光の中、誰かが座っている。
なんてことはない普通の格好をした高齢の女性がイスに腰掛けていた。
魔女「おや、めずらしいね。ジュールが自ら連れてくるなんて」
ジュールと呼ばれた男性は黙っている。
魔女「あなたたち、とりあえず座って」
思いの他優しそうな魔女は微笑んでイスを進める。
「あ、ありがとうございます。でも、時間が無いんです!私のおばが重症で・・・すぐにお力をお借りしたいんです!」
魔女「おば・・・おや、あなた・・・」
魔女がのバングルに気がつく。
魔女「・・銀色の髪・・・あの時の・・・?」
「私を覚えておいでなんですか?すみません、私は幼くて記憶が無いのですが、その節はありがとうございました」
魔女「ありがとう・・・かい」
「・・・? あ、あの、それでおばは・・・」
ジュール「魔女は・・・母はもう契約の力を使うのをやめたんです」
「息子さんだったんですか・・・え?やめたって何故・・・」
ジュール「契約者が母を憎むからですよ!!」
「・・・!!」
“毎日生きている事がツラい”
契約者の女性が言っていた言葉を思い出す。
魔女「・・・私もね、別にその人の一生を相手に捧げてほしいなんて思っているわけじゃない。だけど、生死を左右するような強い力には、やはり大きい代償がつくようだ。私の願いでそうしているわけじゃない。ただ・・・どうしようもない時、その覚悟のもと救ってあげたいとこの力を使っていただけだったんだ。けれど・・・」
魔女は押し黙る。
ジュール「けれど、両腕のバングルの者は承諾者に虐げられ、こき使われ、契約のため手を出せない。その晴らせない恨みを母に向けた。“あいつが助けたから”“助けてくれなければ良かったのに”“死んだ方がマシ”“何であんな条件つけるんだ”・・・そうだ、全て魔女のせいだ!!!あいつが元凶だ!あいつを殺せ!!!」
ジュールの悲痛な叫びが続く。
ジュール「母が何をしたというんですか。承諾者の・・人間の性根の悪さを棚に上げ、手を貸した母を恨む。感謝こそされても、命を狙われる道理なんて無い!こんな暗く汚い所で暮らさせて、都合の良い時だけ頼ってくる。そしてまたその“契約者”は母を恨む!」
「ごめんなさい・・・」
は泣いていた。
「本当にごめんなさい・・でも、それでも・・・感謝している者もいるんです。私のように・・・。生きていれば、ツラい、苦しいって思いをする事ができる。でも、死んでしまったらその思いすらする事はできない。私は・・・あなたのお母様に深く感謝しています」
ジュール「・・・・・」
「魔女さん・・・いえ、お名前は?」
魔女「・・ベラよ・・・」
「ベラさん、お願いします。私は“契約者”ですが“承諾者”にもなれますか」
ベラ「今までにケースが無いから何とも言えないわ」
「それでも・・・お願いします!!」
小さく頷いたベラ。
フ「決まりだな。どうすりゃいいんだ」
ベラ「契約自体にそんなに時間はかからない。ただ、契約者と承諾者、両者がいる場に私が行かないと・・・」
ひょいっ。
フランキーがベラを抱え上げる。
ジュール「ちょ・・・母は高齢なんです!無茶なマネは・・・」
フ「衝撃を和らげながら運ぶ事なんて造作も無い。女1人、体重なんか感じもしないぜ」
ベラ「ぽっ(女・・・)」
ジュール「(何で頬染めてんだよ)」
「お願いします。行きましょう!」

ページ移動

Copyright(c) ワンピース魂. All Rights Reserved.